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#2「お風呂上がりに水を浴びると風邪をひかないって本当?」

男女によって冷え方は違う!?

平林:ところで、男と女だと、筋肉と脂肪の割合が違っていますよね?

笹木:そうですね、標準的な体脂肪率も全然違いますしね。

平林:女性よりも男性の方が体を覆う脂肪が少なくて筋肉が多い。しかも血流が良いので、「お風呂上がりに水を浴びる」という知恵袋は、特に男性にはよく効くと思います。ただ、もしかしたら、女性の方は効きが男性よりは効果が少ないかもしれません。生物学の実験で、「冷たい水に手を入れて温度を測る」っていうことをやったことはありませんか?

笹木:私はやったことないです。

平林:その実験をすると、冷水中の指先の温度が冷水に冷やされてグンと下がるんです。ただ、その指先の温度はその後どうなると思います?

笹木:その後・・・温度が上がるんですか?

平林:そうですね。温度が上がったり、あまり指先の温度が下がらないように人間の体は体温調整をします。それなら、冷水から指を出したら、指先の温度は戻ると思いますか?

笹木:はい。

平林:(生体内熱移動の教科書を見せながら)このグラフのタイトルを見てもらえますか?

笹木:「男子大学生の寒冷血管反応」・・・。

寒冷血管反応とは

人の体は末梢組織を守りながら、一方では生命維持のための体の中心温度を保つように血管の拡張、収縮が繰り返すこと。

笹木:その次には、「女子大学生の寒冷血管反応」というグラフもありますね。

平林:その研究報告では、男女大学生の間で、ちょっと違う結果になっていますよね。つまり、「女性は冷水中に浸しても、血流を良くして指先を温めることがあまりできない」っていう実験結果なんです。この実験を見ると、男女で指先を温めることができる度合いが違って、女子大生たちは男子大学生にくらべて指先が冷たいままですね。ということは、エアコンの部屋に入った時などに、指に限らず、男性の方は体表面を温かく調整する機能が強いけれど、女性は冷えやすい、と考えることができるかもしれませんね。

笹木:なるほど。

平林:もちろん、今の話は体の表面だけ話ですから、体の中の温度はどうなっているかはわかりません。実際には、男性・男子大学生の方が女性・女子大生よりも体の中は冷えちゃっているということも十分ありそうですよね。ということは、女性の方は指先とか皮膚は冷たいけど、体の中は温かいということもあるかもしれません。ちょっと、男子と女子の違いに関するワンポイント知識を披露してみました。さて、他に何か質問はありますか?

お風呂を出た直後、寒く感じるのはなぜ?

笹木:「お風呂を出た後に寒く感じる」っていうのは、もちろん温度の差もあると思うんですけど、皮膚についた水分が蒸発して熱が奪われてくのが主な原因なんですよね?

平林:それは「気化熱」ですね。さきほど、「体の水をきちんとふき取ると」なんて言いましたが、体が濡れたままだと気化熱でものすごく体内の熱を奪われてしまいますね。だから、お風呂上がりに水を浴びたら、風邪をひかないために、くれぐれもちゃんと体を拭きましょうね。

笹木:そこは基本ですね(笑)

気化熱とは

液体が蒸発・気化するために使われる熱量。蒸発熱ともいう。

平林:お風呂上がりに水を浴びたら、血管だけ収縮させて水は拭き取って下さいね。実際には、お風呂に入った後は少し汗をかくので、タオルで水を拭いても、その後、多少の汗が出ちゃうんですよ。血管が収縮すれば汗が出なくなりますから、汗を抑えるためにも「水浴び」は役に立つんです。他に何か疑問はありますか?

髪を濡らしたまま寝ると風邪をひきやすい?

笹木:髪を濡らしたまま寝ちゃうと風邪ひきやすいのも気化熱が原因ですか?

平林:そうですね。少なくとも、気化熱で熱を奪われるので、体が冷えて、風邪はひきやすくなりますよね。夏に、水を地面や道路にまく「打ち水」をしますよね。あれは、「水が気化するときに周りの熱を奪う」気化熱で冷やしているんです。アスファルトに打ち水をすると、2度くらい温度を下げると言われていますよ。そんな風に、水に濡れたままでいると、気化熱で熱を奪われて、冷えてしまいます。ただ、髪を濡らした場合は、体表面の皮膚ではなく髪の毛や頭部近くから熱が奪われるのだけなので、実際のところ、どのくらい本当かは分かりません。

とはいえ、体を冷やさない方がよいですから、風邪をひかないためにも、寝るときはちゃんとドライヤーしましょうか。今日はここまでにしましょう。お風呂に入った時の人間の体の仕組みは大分、理解できたんじゃないですか? ぜひ、明日、誰かに「お風呂」と「体の冷え」の科学を話してみて下さい!

「水を浴びることによって風邪が引きにくくなる」ということに熱伝導率が関係していると聞き、前に理工学実験で熱伝導について学んだときのことを思い出しました。その実験は銅とアルミニウムを使用したものだったのですが、同じ温度にも関わらずその2つの金属に触った時、銅の方が冷たく感じて驚いたのを覚えています。  平林先生が順を追って丁寧に説明してくださったので、水を浴びることによって体内に起きるメカニズムがよく分かりました。女性には冷え症が多いとよく言われますが、もともと筋肉と脂肪の割合からいって冷えやすい体質だったんですね。私も冷え症でとても悩んでいるのですが、筋肉をつけて内部から体を温めたいと思います。  ところどころ豆知識などを挟んでくださるのでとても面白かったです。ためになるお話をありがとうございました。