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#2「お風呂上がりに水を浴びると風邪をひかないって本当?」

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そもそも「体内の熱の仕組み」とは・・・

笹木:前回教えてもらった「温泉の成分ってどれくらい体に良いの?」の解説、とても面白かったです!そこでふと疑問に思ったのですが、おばあちゃんの知恵袋でよく聞く「お風呂上りに水を浴びると風邪をひかない」っていうのは本当なんですか?

平林:なるほど。それでは、その疑問に答える前に、まず「人間の体の熱の仕組み」について考えてみましょうか。“体から熱を奪うもの・仕組み”には、どんなモノがあると思いますか?

笹木:汗とかですか? ほかは何だろう。

平林:そう、体から出る汗は重要ですね。あと、ほかには何があると思いますか? たとえば、熱いモノを冷やそうとしたらどうします?

笹木:“フーフー”って息で吹いて冷まします。

平林:そうですね。単純に空気と触れ合っているだけでも“熱を奪われる”わけです。だから、汗をかかなくても皮膚を通して“熱を奪われること”つまり“熱のやりとり”があります。体が「どれだけ熱くなるか、つまり、発熱するか」ということと、皮膚からどれだけ熱が奪われるかという関係から、体温が決まります。そこで、「人間の体が熱くなる」方から考えてみると、人間の体は、おおよそ100ワット電球と同じくらい、いつも発熱しているんですよ。

笹木:そんなにですか?

平林:だから、その100ワット電球と同じくらいの熱が皮膚などから体の外に出ていかなかったりしたら、人間の体はとても熱くなってしまうわけです・・・。けれど、実際は人間の体温ってだいたい37℃くらいで、とても熱いわけではないですよね。それなら、どうやって人間の体から熱が出てっているかを、話していきますね。

熱を伝える「熱伝導率」とは?

平林:まずは、「熱の伝わり方」を説明させてください。(黒板に、熱の伝わり方を示す熱伝導方程式を書く)

笹木:この方程式、久しぶりに見ました(笑)

平林:「熱伝導方程式」と難しそうな名前はしていますけれど、この方程式が意味しているのはとても単純なことですね。つまり、「温度差があると、熱伝導率λと熱容量Cvにしたがって温度は変わっていきますよ」というだけのことです。もっと短くいうと、「熱伝導率が高いと熱が伝わりやすい」「熱を奪われたりしやすい」ということです。さて、人の体のほとんどは水分ですが、たとえば、水の熱伝導率はどのくらいだと思いますか?

笹木:えっ?どのくらいというと、どう答えればいいのでしょう(笑)。

平林:水の熱伝導率は0.6W/(m・K)です。だから、人の血液もほぼ同じ0.6W/(m・K)くらいですね。比較というわけではないですが、宝石のダイヤモンドならどのくらいの熱伝導率だと思います?

笹木:低そうですね。

平林:違うんです。その逆で、ダイヤモンドの熱伝導率は1500W/(m・K)くらいです。つまり、ダイヤモンドは熱をとても伝えやすい物質なんです。

笹木:そうなんですか。意外です。

平林:さらに凄いのは、新素材で有名なカーボンナノチューブです。どのくらい熱を伝えやすいと思いますか?

カーボンナノチューブとは

「カーボン=炭素」「ナノ=ナノメートル(nm)」「チューブ=円筒」と3つの言葉を合わせた素材。その名のとおり、炭素原子が網目のように結びついて筒状になったモノで、直径はナノメートル単位ととても細く、人の髪の毛の5万分の1の太さ。構造によって金属にも半導体にもなるという特性を持つ。ナノテクノロジー材料としてもっとも注目されている。熱伝導率は3000~5500W/(m・K)

笹木:ダイヤモンドと同じ炭素なので、高そうですね。

平林:カーボンナノチューブの熱伝導率は3000から5000 W/(m・K)くらいで、ダイヤモンドより、さらに熱を伝えやすいんですね。

お風呂上がりに体が冷える理由とは?

平林:さて、ここで人間の問題に戻りますよ。人間の体の中で、脂肪と筋肉なら、どちらの方が熱を伝えやすくて、どちらの方が熱を伝えにくいと思いますか?

笹木:脂肪の方が伝わりにくそうですが・・・

平林:そう、その通りですね。料理をするときの「焼け方」を見ていればわかるかもしれませんが、筋肉より脂肪の方が熱を伝えにくいんです。脂肪の熱伝導率はだいたい0.5W/(m・K)くらいですから、あまり熱を伝えたりすることはありません。

ということは、お風呂に長く浸かって温かくなった後に、冷たい空気に当たったとしても、脂肪を通して伝わる熱だけを考えたら、人は体脂肪に覆われているわけですから、体内の熱が体表面まではあまり伝わっていかないんです。それなら、体内の熱を外へ運び、熱を失わせているものが何かというと、それは体中を流れている血液なんです。つまり、熱を持った熱い血液が体の熱を体の表面近くまで体内の熱を持って行き、そして血液が冷やされて体の中へ戻ってきて体全体を冷やす、というわけです。それが、体が冷えてしまう仕組みです。

お風呂上がりに体を冷やさない方法とは?

平林:ということは、お風呂上がりに、体を冷やしたくなかったら、血液の流れをなるべく抑えればいいわけです。風呂上りに冷水を浴びた瞬間を考えてみると、体は水を浴びた瞬間に“寒い”と勘違いし、血管が収縮してしまいます。もし、その後すぐに体の水をきちんとふき取るなら、水を浴びた瞬間は冷たく感じても、実際にはほとんど熱は奪われません。ということは、水をかけると何が起きるかというと、ほとんど熱を奪われないのに、熱を体から奪う原因となる「血液の流れを抑える効果」を得ることができます。その結果、体の表面近くの皮膚は周りの空気と同じように冷たくなるけれど、体の中はホカホカと暖かいという状態が続きます。

笹木:つまり、お風呂上がりに水を浴びると体内の熱が奪われにくいため風邪の予防になるというわけですね。

平林:そういうことです。そういうわけで、最初の質問「お風呂上りに水を浴びると風邪をひかない」というのは本当なんです。

笹木:なるほど。面白いですね!